※2026年7月時点の情報に更新しました。税制の詳細は必ず国税庁・税務署・税理士にご確認ください。
退職後の手続き全体の流れ(時系列チェックリスト)はこちらの記事にまとめています。
早期退職を考えるとき、意外と見落としがちなのが「退職金とiDeCoを受け取る順番で、税金が大きく変わる」ことです。
結論からお伝えします。
巷でよく聞く「5年空ければOK」(2026年から10年)は、iDeCoを先に受け取る逆の順番の話で、退職金が先のケースには当てはまりません。
ただし、退職金が退職所得控除の枠より少なかった場合は、「みなし勤続年数」の仕組みにより調整が小さくなる(ゼロになることもある)——これが今回、筆者が調べて分かった重要ポイントです。
この記事では、55歳で早期退職した筆者の実体験と、モデルケースの計算例で、この仕組みを順に解説します。

【実体験】退職所得控除の「勘違い」に気づいた話
企業型確定拠出年金(企業型DC)取り扱いの悩み
2024年12月末、筆者は長年勤めた会社を退職しました。
勤めていた会社では、入社当初の「確定給付型企業年金(DB年金)」から、「企業型確定拠出年金(企業型DC)」に途中で移行されました。
移行された当時の筆者は投資の知識ゼロ。
正直、「投資=ギャンブルでお金が減るもの」と思い込んでいたため、企業型DCでは迷わず100%現金担保型を選んでいました。
ところがその数年後、YouTubeの「両学長 リベラルアーツ大学」チャンネルに出会ったことで考え方が変わります。
少しずつ投資を学び、「現金だけで守るより、インデックス投資を組み合わせた方が将来の可能性が広がる」と気づき、徐々に分散投資へ切り替えました。
そして退職を機に、企業型DCをiDeCo(個人型確定拠出年金)に移すことに。

退職金受け取りと「退職所得控除」の選択
退職直前、会社から「退職金の振込先」と「退職所得控除を使うかどうか」の資料が届きました。
当時の筆者は深く考えず、「退職所得控除が使えるなら使わないと損!」と思い、迷わず控除使用を選択しました。
退職後、無事に退職金が口座に振り込まれましたが、ここで勘違いに気づきました。
- 退職金と企業型DCが合算され、退職所得控除が反映された金額が振り込まれる
- 振り込まれた企業型DCの金額を、別途iDeCoに移す
と筆者は思い込んでいたのです。
しかし、実際は企業型DCから直接iDeCoに移行することになるため、早期退職の時点では企業型DCに対して退職所得控除は適用されませんでした。

つまり、退職時点で退職所得控除が適用されたのは退職一時金のみで、企業型DCの資産は課税されないままiDeCoへ移換された、というのが正しい姿でした。
では、そのiDeCoを将来受け取るとき、税金はどうなるのでしょうか。
受け取る順番で適用ルールが変わる
まず全体像です。どちらを先に受け取るかで、適用される調整ルールが異なります。
| 受け取り順序 | 適用されるルール | 内容 |
|---|---|---|
| iDeCoが先 → 退職金が後 | 5年ルール(2026年以降は10年ルール) | 退職金側の控除計算で、前年以前4年内(改正後9年内)のiDeCo受給と重複調整 |
| 退職金が先 → iDeCoが後(筆者のケース) | 19年ルール | iDeCo側の控除計算で、前年以前19年内の退職金と重複調整 |
筆者のように退職金を先に受け取った場合、5年どころか約20年空けない限り重複調整の対象になります。
2026年の税制改正(5年→10年)も、このケースには影響しません。
「じゃあ、iDeCoの控除はほとんど使えないの?」
——筆者も一度はそう青ざめました。
ところが、調べていくと「みなし勤続年数」という重要な仕組みがあることが分かりました。

19年ルールの計算手順|鍵は「みなし勤続年数」
重複調整は、次の手順で計算します。
手順1:みなし勤続年数を算出
先に受け取った退職金の額から逆算します。
- 退職金 ≦ 800万円 の場合
→ 退職金額 ÷ 40万円(1年未満切捨て) - 退職金 > 800万円 の場合
→ 20年 +(退職金額 − 800万円)÷ 70万円(1年未満切捨て)
手順2:みなし退職日を確定
実際の退職日から「実勤続年数 − みなし勤続年数」の分だけさかのぼった日を、計算上の退職日とみなします。
手順3:重複期間を確定
企業型DC・iDeCoの加入開始日から「みなし退職日」までが重複期間になります(1年未満切捨て)。
手順4:iDeCo側の控除全額を計算
加入年数(1年未満切上げ)をもとに、40万円×年数(20年超は800万円+70万円×超過年数)。
手順5:調整
手順4の控除額から「重複年数 × 40万円」を差し引いた額が、実際に使える退職所得控除です。

ポイントは手順1です。退職金が控除枠より少ないほど「みなし勤続年数」が短くなり、みなし退職日が過去にさかのぼる=重複期間が縮むのです。
退職金が比較的少ないリーンFIRE組には、朗報になり得る仕組みです。
モデルケースで計算してみる
筆者の状況に近い、次のモデルケースで実際に計算します。
※以下の金額・年数は説明用のモデルケースです。
② 退職一時金:700万円(退職所得控除を使用済み)
③ 企業型DC加入:2008年4月(在職中にDB年金から移行)
④ 退職後iDeCoへ移換し、掛金拠出なしで運用のみ
⑤ 60歳でiDeCo一時金1,000万円(仮定)を受け取り
手順1:みなし勤続年数
退職一時金(700万円) ÷ 40万円 = 17.5 → 切捨てで 17年
(実勤続33年の退職所得控除枠は1,710万円。700万円しか使っていないため、みなし年数が大幅に短くなります)
手順2:みなし退職日
退職月2024年12月から(実勤続33年 − みなし勤続年数17年 =)16年さかのぼる → 2008年12月頃
手順3:重複期間
企業型DC加入(2008年4月)〜みなし退職日(2008年12月)= 約9ヶ月 → 1年未満切捨てとなるため 重複0年
つまりこのモデルケースでは、19年ルールの対象でありながら、重複調整はゼロという結果になります。
手順4:iDeCo側の退職所得控除
控除のベースとなるのは掛金を拠出していた期間のみ(モデルケースの場合、企業型DCの2008年4月〜2024年12月の16年9ヶ月)で、退職後の運用のみの期間(運用指図者期間)は含まれません。
16年9ヶ月 → 1年未満切上げで 17年 → 40万円 × 17年 = 控除680万円
手順5:課税額の計算
- 課税退職所得 =(iDeCo一時金1,000万円 − 控除680万円)× 1/2 = 160万円
- 課税退職所得160万円に対し、所得税(5%)+復興特別所得税+住民税(10%)で、概算24〜25万円程度の納税額
- iDeCo受け取り時の手取りは約975万円のイメージ
※税額はあくまで概算のモデル計算です。基礎控除等の他の要素や最新の税制により変わるため、実際の判断は税務署・税理士にご確認ください。

端数処理のルール(間違えやすいポイント)
計算の途中で出てくる端数は、場面によって扱いが逆になります。
- 控除額を計算する加入年数 → 1年未満切上げ(例:16年9ヶ月→17年)
- 差し引く重複期間 → 1年未満切捨て(例:9ヶ月→0年)
- みなし勤続年数 → 1年未満切捨て(例:17.5年→17年)
いずれも納税者に有利な方向の扱いですが、混同すると計算が大きく狂うので注意してください。

iDeCoは分割受け取りも可能
iDeCoは一括だけでなく、年金形式(分割)で受け取ることもできます。
分割なら課税が分散されます。
ただし、毎回受取額に対して課税されることや、iDeCo口座に残額を預けたままになる点は少し気になるところ。
筆者は退職所得控除を使って一括で受け取り、自由に生活費や投資資金として使えるお金として確保する方向で考えています。
なお、年金形式(分割)で受け取る場合は雑所得(公的年金等控除)の扱いとなり、今回解説した退職所得控除の重複調整とは別の計算になります。

まとめ|受け取り順とタイミングは「計算してから」決める
- 退職金が先・iDeCoが後は「19年ルール」。「5年(10年)空ければOK」は逆順の話なので混同しない
- みなし勤続年数の仕組みを知る。退職金が控除枠より少なければ、重複調整が小さく(ゼロにも)なる
- 端数処理に注意。加入年数は切上げ、重複期間は切捨て
- 最終判断は一次情報+専門家で。制度は改正が続いており、この記事も筆者のケースの調査記録です。実際の受け取り前には税務署・税理士に確認を
筆者もiDeCo受け取りまであと4〜5年。その間も制度の情報を追いながら、最も納得できる受け取り方を検討していきます。

なお、企業型DCからiDeCoへの移換手続きがまだの方は、こちらの実体験記事を先にどうぞ。筆者は2度の申請不備で5ヶ月かかりました…。
また、退職後の手続き全体の流れ(健康保険・年金・住民税・確定申告)は、時系列チェックリストにまとめています。



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