長年の会社員生活と当時の働き方
私は数十年、同じ会社に勤め続けてきました。
入社はバブル崩壊直前で、同期の人数が社員全体の1割を占めるほど多かった時代です。
当時は休日出勤や残業が100時間を超えることも珍しくなく、それが「普通」とされていました。
昇進に恵まれていたわけではありませんが、仕事そのものにはやりがいを感じ、続けることができていました。
しかし、自分の責任となるトラブルでは話が違いました。
主担当となった大きな案件で作業ミスが重なり、9日間連続で徹夜をすることに…。
早朝のシステム停止時間に1時間だけ仮眠を取り、多くの人に助けられながら乗り切ったものの、心身ともに疲れ果てたことは忘れられません。
過去には数日間の徹夜対応や休日出勤が続いたこともありましたが、そのときは「自分の責任ではない」と思うことで気持ちは比較的楽でした。
こうした極端な働き方や理不尽な上司に悩まされることもありましたが、同期との飲み会や愚痴で発散し、何とか大きな不調を抱えることなく長い会社員生活を続けることができました。
変化の兆しと違和感
年齢を重ねるにつれ、仕事の成果責任はあまり変わらない一方で、コンプライアンスやガバナンスといった要素が強く求められるようになりました。
書類作成やチェック作業が増え、「これは本当に必要なのか?」「ここまでやるのは過剰では?」と感じる場面が増えていきました。
純粋に仕事を楽しめていた気持ちが、少しずつ薄れていったのです。
さらに、40代前半になると、今までの担当業務が減っていってしまい、1年ごとに新しい部署へ異動するようになりました。
慣れない環境や新しい人間関係、理不尽なお客さんへの対応など、負担は徐々に積み重なっていきます。
直属の上司は責任を回避するわ、プロジェクトグループの管理方針はガチガチ。
何とか仕事をこなしてはいましたが、そのうちに胸やけのような症状が出始め、「さすがに心身が疲れているのかもしれない」と感じるようになりました。
そこで、以前通ったことのあるメンタルクリニックに再び相談に行くことにしました。
薬を処方してもらったものの効果は実感できませんでしたが、「気休めでもいい」と思い、しばらくは服用を続けていました。
身体からのサインと休職決断
ある日の出勤途中、乗車中に突然、強い吐き気に襲われました。
最初は我慢して出社していたものの、日が経つにつれて症状は悪化。
ついには耐えられなくなり、出勤途中に下車して会社に休みの連絡を入れると、不思議なことに吐き気はすっと消えてしまいました。
「これは仕事が原因なのではないか…」と気づいた瞬間でした。
メンタルクリニックで相談すると「しばらく休養を取ってはどうか。必要なら診断書も書きますよ。」と提案されました。
しかし当時は異動直後で、前任者から引き継いだ仕事が難航しており、「今すぐ休むわけにはいかない」と断りました。
それでも症状は改善せず、数ヶ月後には白旗を上げざるを得ませんでした。
医師からは「適応障害」との診断を受け、1ヶ月半の休養を要する旨の診断書を発行してもらい、上司に休職を伝えることになりました。
休職期間と傷病手当の支え
休職といっても、診断書を提出して休んだ当日から始まるわけではありません。
(私の場合は、)まず有給休暇があてがわれ、その後に「病欠」などの特別休暇を経て、正式な休職に入りました。
上司に休職の意思を伝えて休んでから、実際に休職が始まるまでには約3か月半のタイムラグがありました。
休養期間が終わりに近づくと、再度診察を受け、医師と相談しながら必要に応じて診断書を更新。
結果的に休養を延長し、体調が整うまで療養に専念することができました。
生活面では「傷病手当金」に救われました。
会社を通じて健康保険組合に申請を行い、約1ヶ月後には振り込みがありました。
給料の3分の2ほどの金額とはなりますが、生活費の大きな支えとなり、経済的な不安なく療養に専念することができました。
休職を経て学んだこと
休職を経験して強く感じたのは、
「どんなに(自分が)タフだと思っていても、環境の変化や長期的な負荷が重なれば誰でも心身に限界が来る」
ということです。
かつては9日連続徹夜でも大きな不調を感じなかった私でさえ、40代になり環境が変わったとき、胸やけや嘔吐感といったサインが身体から現れました。
そのとき我慢を続けていたら、もっと深刻な状態に陥っていたかもしれません。
素直に医師に相談し、休職という選択を取ったことで、体調の回復と共に「働き方の軸」を見直す時間を持つことができました。
復職後は、
- 仕事を翌日に持ち越さず、早めに処理する
- 定時間内で仕事を終えることを意識する
- 困難を一人で抱え込まず、周囲と共有する
といった考え方を実践しました。
もちろん苦労はありましたが、その後退職に至るまで、再び大きく挫折することなく働き抜けたのは、この経験があったからだと思っています。
おわりに
休職を経験して学んだのは、「不調を放置せず、適切に向き合うことの大切さ」です。
働くことそのものを否定するのではなく、心身の限界を見極め、必要に応じて立ち止まる勇気を持つことが大切だと感じました。
大事なのは「すぐに辞める」ことではなく、まずは医師に相談したり、信頼できる人に話してみたりして、状況を整理することです。
少し休むだけで回復できる場合もありますし、その経験が今後の働き方や生き方を見直すきっかけにもなります。
そして、仕事以外に自分を支えてくれる「つながり」を持つことも忘れてはいけません。
町内会や趣味のサークル、スポーツクラブ、さらにはオンラインコミュニティなど、身近となる「居場所」は孤独を和らげ、悩みを相談できる仲間や安心感をもたらしてくれます。
「無理に続ける」でも「すぐに辞める」でもない。
状況に応じて柔軟に立ち止まりながら、自分に合った働き方や暮らし方を整えていくことが、これからの時代に必要な姿勢ではないでしょうか。
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